吉永製作所

2020/04/30 01:31

先月、西海市にあるヒノキの森へ丸太を切り出す様子を見学させてもらいに行ってきました。前日に待ち合わせ場所を指定する航空写真が送られてきました。何だか抽象画のようです…。
より広域の画像も送られてきました。
ざっくりと海岸線とダムとの位置関係がわかりますがとてもおおらかな道案内です。ともあれくねくねした基幹林道一本なので何とかたどり着くことが出来ました。話は少しそれますが、長崎県は島と半島が多いため海岸線からの距離が15km以上の地点はありません。そのため林業の現場が海と非常に近いのがこの写真からも見て取れます。

現場に到着して最初に案内していただいたのは枝打ちの作業風景。
枝打ちに用いる鎌。柄には滑り止めのラバーが巻かれ、刃はしっかりと研がれていました。今回は直径が50mm位の幼木の枝打ちを見学させていただきました。
下の枝から順番に手際よく枝を打っていきます。
枝を打つ際、より幹に近い枝の付け根部分で切り落とすのがポイントです。まだ枝も細く柔らかいため、スムーズに枝打ちをされているのかと思いましたが大きな間違いでした。実際に体験させてもらいましたが上手にできません。コツは鎌を持つ右手ではなく、枝を握る左手の使い方。これがなかなか難しく、左手で枝を左下の方に引っ張り、枝の付け根部分に生じる繊維を引き裂く力を利用します。そこに鎌の刃を入れ切り抜くといった感覚でした。
左手で枝を引っ張らなければ、両手を使い相当な力を込めても切り落とすことは出来ません。力任せに行うと切り抜いた勢いで鎌が体に当たり、大けがをする恐れのあるとても危険な作業です。確かな技術を習得することで、枝を「打つ」と形容される迷いの無い所作になると実感しました。
枝打ちを終えた幹の様子。木は枝打ちの痕を内包しながら幹を太らせて成長していきます。この痕跡が製材した際に赤く身の詰まった「生き節」として材木の表面に現れます。枝が細いうちに枝打ちすれば小さな節となり残ります。また、木は左右に枝葉を広げながら光合成をして大きく成長していきます。人が何も手を加えなければ木は成長の過程で不要な枝を自ら枯らして落としていきます。この痕跡が「死に節」として材木の表面に現れます。黒く節穴が開くボロボロとしたタイプの節です。そういった生命活動の特徴から、全く節の無い丸太はまずありません。使用する目的に応じて節の表れ方を小さく留め、またはコントロールすることにより、節の無い材木が多く取れる部分を持った丸太を育てることが、枝打ち作業の大きな目的の一つです。